DANJIの「手しごと」に込めた想い
職人の町・西陣のとある賑やかな一角に建つ、
築年数不詳の京町家。
そこを自分たちの手でリノベーションし、アトリエにして、
DANJI Manual Crafts & Brot はオープンしました。
“Manual”は、もともとラテン語で「手」を意味する
”manus”からくる言葉。
金槌や鋸、愛着ある道具を握る、たしかな手応え、
全粒粉やライ麦のパン生地を捏ねる、粘りある手触り。
敬愛する先達たちから手ほどきを受け、
ここにある技術と魂、
仲間たちと手に手をとってつくりあげたアトリエ・・・、
「手」の「ぬくもり」を大切にしてこその「手しごと」。
DANJIが届けたいのは、
人の手のぬくもりから生まれる「モノ」です。
モルタルをこねる手も、壁土をこねる手も、
パン生地をこねる手も、
すべて同じ心でなされる手しごとです。
“Manual”は、“Automatic”の対言葉でもあります。
いまや、人もモノも、あらゆるものが、オートマチックに、
速く、新しく、流れ過ぎてしまう世の中。
どれだけたくさんの商品に触れても、
心に残る「モノ」は多くはない。
でも、そんなあり方に、皆がどこか引っかかりを覚えて、
立ち止まろうとしているのも、今ではないでしょうか。
古くから残っているモノには、
昔ながらの豊かな時間が留まり、発酵し、
新たな味わいを醸し出しています。
DANJIは、古く使われなくなったモノでも、
そのモノのもつ時を愛でて、新たな命を吹き込み、
蘇らせたい。
錆びた馬蹄釘を、軒の庇の留め金に、
お茶席で使われた手炙りを、手洗いの水受けに、
羊毛を土壁に入れて断熱材に・・・。
DANJIのアトリエには、こうした古いモノたちが、
そこかしこに新たな姿をとって生きています。
素材も、身の回りにおいて美しく、やさしい、
天然のものを。
壁につかわれた土、そこに眠る藁、
屋根に葺いた趣ある石たち、
戸や柱を彩る、さまざまな表情をした樹々。
先々にはこの大地に心地よく還ってゆくものを
選んでいます。
住居を支え護る鉄や木、生活を癒やす土と水、
パンを育む火や酵母、
自然界とのつながりを愛でる場としてDANJIはありたい。
ここで生み出される「プロダクト」についても、
一つ一つの材料、一つ一つの工程、一つ一つの出逢いに
想いを凝らして、
使ってくださる方々の喜ぶ顔を思い描きながら、
モノづくりをしています。
DANJIがあるのは昔ながらの職人の町、西陣。
その賑やかな一角に、老若男女、地方国籍を問わず、
さまざまな人々が生活の袖を触れ合わせて、
日々をともに楽しみながら暮らしています。
むかしの集落では、生活に何か不便あれば、
その土地の鍛冶屋や大工が、心安く相談にのり、
その人の手にあった道具を拵えたり、住まいを直したり
していたと云います。
DANJIも、人と人との温度ある結びのなかで、
そのようなモノづくりする職人でありたいと思っています。
「かすがい」、
鉄と木、土とパン、植物と鉱物、機織り機と石臼、
互いに異質なものを取り合わせてつなぐ、美しさ。
様々な人と人、人とモノとがつながり合う、
日々のささやかで心安い、喜びの場になればと願います。